大青工業株式会社

[事業名]省エネルギー型食品保存用高精度恒温冷凍保管庫システムの開発と事業化
[補助金の主な使途]原材料費(冷凍ユニット)・試作開発費(開発者人件費)・委託費(冷凍ユニット設置等)

 

新たなシステムで冷凍を“最適化”

 

鮮度と省エネを両立する冷凍保管システム

 全国有数の水産県である本県では、水産物を保存するため数多くの冷凍庫が稼働しており、長期間の鮮度維持技術は極めてニーズが高い。一方で、食品の鮮度維持には多大な電力投入が必要とされており、低炭素社会実現の観点から省エネルギー化の取組が急務となっている。創業以来、冷蔵冷凍設備の開発・製造を行ってきた大青工業(株)。同社が補助事業により開発した冷凍保管システムは鮮度維持と省エネルギー化を両立する画期的なものとなっている。
 長期間の食品鮮度維持のためには「凍結速度をより早く。貯蔵温度をより低く。」が業界の常識とされている。これに対し同社が開発した冷凍保管庫は、「安定的な貯蔵温度維持」に焦点を当てたものだ。「-35℃を安定的に維持できれば、急速冷凍も極低温もなく食品の長期鮮度維持は可能。」と語るのは同社IoTプロジェクトの米塚主任。「つまり、これまでのような過大なエネルギー投入の必要がないんです。」マグロ冷凍庫でのシミュレーションでは、品質を維持したまま従来比79%減という大幅な電気料金の削減効果が見られ、鮮度と省エネルギー化は両立可能であることを示した。「目指すのはエネルギーの最適化。更に精度を高めるため、今後も改良を続けます。」と意欲的に語った。

 

培った独自技術とAI・IoTの活用

 新システム開発のきっかけは親交のあった大学教授から紹介された学術論文。「急速冷凍・極低温は不要という研究結果は衝撃的で目から鱗が落ちた。」と米塚主任は当時を振り返る。「すぐに社長に相談して、『試験的に作ってみよう』となりました。」事業期間は2か年。大きく2つの取り組みを実施した。まずは、新しい冷凍保管庫の開発。同社が氷温技術(冷蔵と冷凍の中間領域の温度帯を厳密に維持する技術)で培った機構をベースに、長期間の品質維持が可能となる-35℃を安定的に維持する高精度な恒温性獲得を目標とした。それと並行して実施したのが、AI・IoTを活用した省エネルギー運転技術の確立。これは季節、設置環境等の外的要因や除霜時加熱等の庫内状況をIoTセンサーやカメラによるAI 判別で詳細に把握し、それに対応した適切な熱量供給、風量制御を行うことを目的としている。事業を進める上で困ったのは、コロナ禍で必要な非接触センサー等が手に入らなかったことだという。「ものがないため設計ができない。駆け回りながらなんとかセンサーを確保し、事業を進めました。」苦労を乗り越えなんとか完成させた新システム。喜びもひとしおだ。

 

 

技術は大きな財産

 これまでも技術開発等で補助金を活用してきた同社。なかでも今回の補助事業で得られた技術は「5年先、10年先を見据えたうえで大きな財産」になったと感じているという。SDGsやエネルギー価格の高騰で省エネルギー性を重要視する風潮はこれからも続くことが予想される。「補助金のおかげで大きなポテンシャルを持つ技術を得ることができた。」と喜びを語った。

 

 

10年後の更新需要を取り込む

 「今後10年で日本国内の多くの冷凍倉庫が築50年を迎えるとされており、この更新需要をターゲットに定めています。」と米塚主任。需要を取り込むに当たり、顧客が装置・技術を気軽に体験することができる「おためしラボ」を創設するなど積極的な販売促進活動を行うこととしている。「装置・技術の周知活動も行いつつ、冷凍技術に興味のある新規顧客を取り込んでいきたい。」と展望を語った。

 


IoTプロジェクト 主任 米塚 明央さん

AI・IoT 活用の優良事例として各方面で注目を集めている同社。「お客様に損害を与えないことが第一」との考えのもと積極的なAI・IoT 活用を推進している。米塚主任が同社事例とともに仕事に対する姿勢を語る姿は、YouTube の アマゾンウェブサービスジャパン公式チャンネルで確認できるためぜひチェックしてほしい。


取材担当者からのコメント

従来のやり方に固執せず、新しい理論やAI・IoT技術を積極的に活用し業務に上手く落とし込んでいく姿勢がとても印象的であり、同社の一番の強みはこの柔軟さなんだと感じました。

 

  1. 企業プロフィール

    1. ■企業名/大青工業株式会社
    2. ■所在地/青森市問屋町1-9-30
    3. ■TEL・FAX/017-738-2131
    4. ■代表者名/代表取締役社長 鳴瀨 正彦
    5. 資本金/4,500万円
    6. 設 立/昭和25年5月
    7. 事業内容/建設業、設備工事業、管工事業
    8. 活⽤補助事業/令和2年度青森県戦略的ものづくり先進技術事業化支援事業
    9. ■ホームページ/https://www.taiseiaomori.co.jp/
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