株式会社アピール

新技術確立で新分野へ参入 ~医療現場で役立つ3Dツール

新技術にかける熱き思い

精密機器製造を主力に地域を盛り立ててきた同社。ゆえに、「弊社で3D製品を製造していることはあまり知られていなかった。」という中、培ってきた自社の技術を広めたいと未知の世界である医療分野に足を踏み入れた。「全国で戦えるモノを生み出したかった。」という一念だったようだ。

株式会社アピール 佐藤和善さん

開発商品の内容 人体の内部組織を立体化

  まるで印刷するように立体の模型を作ることができる3Dプリンタ。発売当初は世界的なブームを巻き起こし、日本でも食品や建築分野など多方面で活用の場が広がっている。この度、3Dプリンタを有する平川市の㈱アピールが、人体の内部組織を三次元化する技術を確立。医療分野への参入を果たした。
 一般的な臓器の模型とは違い個人それぞれのオリジナルモデルを製作することが可能で、医療用CTやMRIで撮影された二次元スライスデータを三次元に編集して出力する。同社の佐藤部長は、「二次元画像から病変や病気の進行状況を理解するのは素人には難しいが、患者ごとのオーダーメイドモデルがあれば患者や家族の理解度が格段に上がり、医師の負担軽減にもつながります。」と、治療や手術に対しての疑問や誤解が大幅に減り、インフォームドコンセントに大きな力を発揮するという。また、現状を正確に再現できるとあって、「細かな病変の場所を三次元で確認することができるので、手術室に持ち込んだ例も。」と、手術中も重宝されるツールになっているようだ。
 3Dプリンタはアクリル樹脂や石膏だけでなくシリコンといった柔らかい素材にも対応できるため、手術前のシミュレーションや医療関係者の教育にも活用が期待されるという。

 三次元データを送ることによって立体物が製造することが出来る3Dプリンタ

 血管の位置や腫瘍の大きさがわかる可視化モデル 腎臓(左)と肝臓(右)

 左右に動きながら素材を積層させていくことで造形されていく仕組み

事業化までの道のり 新たなビジネスチャンスを模索

 これまで主に工業製品の製造を目的に3Dプリンタを活用していた同社。ビジネスチャンスを広げたいと、東北や北海道にはメディカルエンジニアリングサービスを行う企業が少ないことに着目し、医療業界への参入を検討していたという。「そのためにはデータの編集技術はもちろんのこと、医療分野の知識やニーズの把握が必要だった。」と佐藤部長。弘前大学大学院医学研究科の大山力教授との協力体制が整ったことと、元気チャレンジが採択されたことで、事業化を決めたという。
 術前の説明用ツールとして「臓器モデル」を使いたいというニーズを聞き、試作品の開発がスタート。二次元画像から三次元データを作成する既存ソフトはあるものの、時間をかけて撮られたCTやMRIの画像を取り込むだけでは正確なデータを作ることはできず、精度の高い三次元データへ編集する技術の取得に奮闘。試作をしては評価と検証を繰り返したという。また、編集に時間がかかればかかるほど、患者の病変が変化してしまうという医療分野ならではの問題もあり、スピードの向上も追求した。当初は1ヶ月の時間を要したが、現在は1週間ほどで納品できるという。

助成金活用の経緯とメリット 事業の方向性を打ち出せた

試作段階で使う材料の調達や、医療関係者が集まる展示会出展費用に助成金を活用した同社。展示会では、「技術をアピールしながらも、医師や関係者からの情報収集が最大の目的だった。」と、新技術を活かせるニーズの把握に努めた。その結果、インフォームドコンセントを目的とした可視化モデル以外にも、様々なモデルが誕生することになり、幅が広がったようだ。「おかげでその後の事業展開を考えるうえで、大変重要な活動ができた。」と話す。また、医療関係者へ直接PRできたことで問い合わせが相次いでいるという。

臓器に限らず骨も立体化することができ、軟質素材を使うことで可動型モデルの背栄作も可能

今後の事業展開 他分野への参入も視野に

  技術の進歩や素材の多様化によって、年々拡大している3Dプリンタ市場。本事業について佐藤部長は、「さらに難易度の高い複雑なデータの編集技術を確立し、医療・ヘルスケア分野はもちろん、多様な分野に応用していけるよう取り組んでいくことにしています。」と、今後の展開を語る。最新技術を活用した取り組みはここを新たなスタート地点として、まだまだ発展していきそうだ。

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企業プロフィール

  1. ■企業名株式会社アピール
  2. ■所在地平川市館山上亀岡26
  3. ■TEL0178(20)3400
  4. ■URLhttp://www.appeal-net.co.jp
  5. ■代表者名今井 隆一
  6. ■従業員数302名
  7. ■資本金3,000万円
  8. ■採択年度平成27年度上期
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