【その13】

有限会社 松橋商店
本格的“酒蔵”備えて
他店との差別化図る
あえて日本酒に特化し
徹底した商品管理で顧客を拡大
〒033-0031 三沢市桜町2丁目4−4
TEL 0176-53-3148 FAX 0176-51-1155

 店舗面積27坪で、規模的にはあまり大きくはない酒販店に、素人目には似つかわしくないと映る“酒蔵”がある。コンパクトな定温貯蔵ケースがある店は一般的だが、3坪の広さの貯蔵施設を備えている店は珍しい。日本酒の品質管理に徹底したサービスを提供している経営者のこだわりをうかがい知ることができる。


 酒蔵の三方の壁面の棚に最大で約600本が保管できる。お客様は酒蔵の中に入って好みの日本酒を選ぶ。酒蔵の中の温度は常に摂氏2度に保たれ、身震いするほど寒い。「生酒でも3年は大丈夫ですよ」。店主の松橋昭広さん(53)は、日本酒の味を最大限に引き出す品質管理の大切さを紹介しながら「ウチの酒には心と根性が入っているでしょう」と話す。


■口コミで評判広がり売上減に歯止め

 酒蔵を造ったのは20年前。ディスカウントストアの影響で売り上げが激減した。他店との差別化、専門店化で太刀打ちしようと、日本酒に特化し、「どうせなら一番おいしい状態で飲める酒を売りたい」と本格的な酒蔵を備えた。「同業者からは、市中の酒屋の売上げが減っている時に多額の経費をかけてまでと言われた」というが、口コミで評判が広がって売り上げダウンに歯止めがかかった。


 お客様の中には全国各地に転勤して行った人も多く、転勤先から電話やEメールで注文がある。「お客様の顔を見て、納得して買ってもらっている。原則として来店したお客様だけに売ることにしている。いきなりメールなどで注文があっても断っているが、以前に来店して転勤先からの注文には応じている」。松橋さんは自分の売りたい酒の価値が分かっている人を大切にしたいと話す。しかしプレミアムのついた酒は売っていない。味より名前が先行して売れている酒も扱わない。「品質以上のカネを出させる必要はない」という。
 酒を知り尽くしている、と言っても過言でない松橋さんだからこそのポリシーがある。


■青森県産にこだわったオリジナル商品も計画

「心のこもった酒を、心をこめて売る」。大量生産には否定的で、醸造元の経営者と杜氏が一体となって仕込んだ酒に価値を見出している。蔵元に直接、出向いて仕入れる。
 貯蔵温度を2度に設定しているのも、幾度も失敗を重ねながら、酒蔵から出してから、お客様が自宅に持ち帰って飲む時にちょうど適した温度になるように考えた。酒蔵の電気料金は大きな負担だが、価格に転嫁していない。
 松橋さんは警察官として1年間勤務後、奥さんの悦子さんの父が戦後間もなく創業した酒店を手伝った。3人姉妹で後継者に悩んだ父が「誰かに貸す」と言ったため店を継いだという。
 しかし「酒屋の酒知らずだった」と松橋さんは笑う。下戸で酒は全く飲めない。知識もなく、お客様に聞かれても返答に窮した。そのため酒に関する本を片っ端から読みあさった。「何事にものめり込んで追究する性格」と悦子さんは評している。この姿勢が、経営方針の頑固なまでのこだわりとなっている。「焼酎ブームというが、あれもこれもは不可能。ただ売ればいいというものではない。日本酒に特化したのは、青森はおいしい食べ物が豊富で日本酒が合う」を貫いている。
「みさわ旨酒の会」を主宰し、毎年1回、40人程度が集まり、蔵元も招いて日本酒の情報交換をしている。
 いまでは松橋さんのうんちくに蔵元も耳を傾け、信頼関係ができた。今年中には、蔵元と提携してオリジナルの日本酒を発売する。青森県産の酒米、糀を使用し、「青森をもろに出す酒を作る」と意気が上がっている。


 近くの三沢市民病院が4年後には移転するため、商店街の衰退は目に見えている。他店との差別化を一層強めて、今後の展望を切り開こうとしている。


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