【その7】

有限会社 古畑旅館
青森ヒバにこだわる
創業約400年を誇る温泉旅館
市町村合併で
よりダイナミックな観光振興に期待
元和元年(1615)創業
〒039-4401 むつ市大畑町薬研1
TEX0175-34-2763 FAX0175-34-6315
http://www.yagen.jp/furuhata/

 玄関戸を開けるとロビーにある樹齢800年のヒバの巨木が宿泊客を歓迎してくれる。敷地内には古畑家初代が仕えた主君が温泉を発見した当時に植えたと伝えられているイチイの大木が下北の厳しい風雪に耐え、しっかりと根を踏ん張っている。これら巨木は、古畑家先祖が湯守りをしながら旅館業を営んできた永劫の歴史を刻んだモニュメントである。
 古畑(ふるはた)旅館は薬研温泉に4軒ある旅館、ホテルの中で歴史が最も古い。初代は落人となった主君の供をしてこの地にたどり着き、定住した。1615年のことで、古畑と呼ばれたこの地に人は住んでいなかった。



■新工法も考案し理想の浴場を完成

 歴史の古い温泉地は各地にあるが、開湯以来390年にわたって同じ家系の当主が暖簾(のれん)を守り続けている例は全国でも珍しい。現当主で社長の古畑一雄さん(64)は18代目。父が他界したため26歳で継承した。
 雪深い薬研温泉の旅館は冬期間休業し、ヒバの伐採、狩猟などで生計を立てていた。道路が整備され、昭和43年には下北半島が国定公園に指定されたのを機に通年営業にし、古畑さんは旅館経営に専念した。
 社長に就いた4年後には、地区で初めての総ヒバ造りの浴場を作った。平成元年には旅館の半分をリフォーム。平成9年には残り半分を新築した。部屋の設計は社長自ら行った。古畑さんにとって、自らの経験から得た知識で自らも満足する旅館を建てるのが夢。それが父から経営を引き継いだ証しになり、さらに次代に引き渡す遺産になる、が古畑社長の思いだったという。
 各部屋には床の間を作り、ベランダを広く取った。お年寄りの宿泊が多いためバリアフリーにした。部屋はもちろん廊下や階段、手すりは地元特産のヒバ材をふんだんに使った。ヒバ材へのこだわりは古畑旅館のセールスポイント。今年4月には、これまでの総ヒバ造りの浴場を全面改装した。

 新しい浴場はヒバ独特の美しい木目を保つため樹脂塗料によるコーティングが特徴。これまで3回改装を行ったが、ヒバは2〜3年で黒ずむほか、水分を含んで収縮を繰り返し板と板の間にすき間が生じる。8〜9年ごとに張り替えが必要だった。そこで古畑さんは、そのマイナス面を防ぐためのコーティングを研究、新工法を探し出したうえで浴槽や洗い場、天井まですべてをヒバ材で囲い込んだ。これで20年は維持できる。宿泊客からはヒバ風呂に絶賛のメールが寄せられている。同業者からも「ぜい沢すぎる」と、うらやましがられる自慢のヒバ浴場となった。
 もう一つのこだわりは徹底した清掃。トイレや洗面所のステンレス部分に指紋がついていることさえ見逃さないという。あるとき、こんなこともあった。宿泊客が帰った後、部屋の中にメモ書きで「すごく清潔で、すがすがしい日を迎えることができました」と、千円札が添えてあった。古畑さんは、このときほど「旅館業をやって良かった」と励まされたことはないという。

■恐山を核とした下北一丸となった観光PRを

 今年1月に『古畑家由来記』を発行し、旅館の各部屋に置いてある。宿泊客に薬研温泉と古畑旅館の歴史の趣を感じ取ってほしい、との思いがある。

 薬研温泉は10年後に開湯400年祭を開く計画がある。古畑さんは、今年3月、地元大畑町がむつ市と合併したことで、観光振興のよりダイナミックな展開に期待を寄せている。「下北には貴重な観光資源がたくさん。目玉である恐山を核にした下北一丸となった広域観光PRが大切」と提案している。


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